月別アーカイブ: 2013年2月

Domaine Georges Roumier Musigny Grand cru・・・

9月24日からはじまった収穫。

8月の第三週までは “例外的に偉大な年” を予感させていた 1994年。

病害も少なく、シャブリ地方以外は霜による被害も無いという稀にみる良い年を迎えるはずだった ブルゴーニュ地方。

しかし 収穫からさかのぼること30日、コート・ドールに雨が降りました。

降り続きはしなかったそうですが、9月上旬の不安定な天候により葡萄にとって一番大切な収穫前の30日間の日照時間が200時間に満たなかった為、 ヴィンテージ・チャートではあまり良く書かれていません。

記録によると160時間から180時間の間。

(逆に200時間を越えて、暑すぎても葡萄にはよろしく無いので 造り手の方々にとって 収穫前の30日間は気がきではないでしょう)

しかし それだけの日照時間だったにも関わらず 葡萄の糖度はまずまずだったそうです。

ブルゴーニュワインの最大の魅力である”糖度と酸”のバランスは若干崩れたのかもしれませんが、一流の生産者はどの様にこのヴィンテージを仕立てたのでしょうか。

ドメーヌ ジョルジュ・ルミエ
《ミュジニー》グラン クリュ

1994年。

19年熟成させた、天才的醸造家 クリストフ・ルミエ 氏の手による、特級畑ワインならばそれを知るための個体としては悪くないと思います。

さて2月19日に行った今回のエピ ワイン会、ライン・ナップは・・・

シャンパーニュ・・・

《ポル・ロジェ》の トップ・キュヴェ
“サー=ウィストン・チャーチル”
1999年。t02200391_0405072012427275452赤ワイン・・・
ドメーヌ ジョルジュ・ルミエ
《ミュジニー》グラン・クリュ
1994年。

o0450033812428711139

(その他にシャンベルタン村のグラン・クリュ1本と 参加者から頂いたメゾン ルロワの広域ワイン1本で計4本)

《ポル・ロジェ》の”サー=ウィストン・チャーチル” 1999年はもうすぐ新しいヴィンテージ 2000年がリリースされるので、駆け込み寺的なチョイスです。

ピノ・ノワール比率が高いキュヴェですから しっかりと重厚感があり、色も深みのある黄金色で、決め細やかな泡が喉に与える柔らかな刺激は高尚の一言。

そして複雑な果物の香りがテーブルを覆いました。次なるワインへの繋がりを考えると、最高の選択だったと思います。

そして メインのワイン・・・

まさか このワインをエピで抜栓する日が来るとは思ってもいませんでした。

19年前に最高の畑から収穫された “ピノ・ノワール・ア・ジュ・ブラン” を一流の造り手が醸造、瓶詰めした 逸品。

値段もさることながら、現存する個体が少ないので”超”が付くほど貴重なワインだと思います。

《ミュジニー》グラン・クリュ

優良年ですと19年熟成は まだまだ早い (2000年代の物は生きているうちに飲めるかどうか・・・) と思われる抜栓タイミングですが、94年はいわゆる 普通の年 という評価なので、逆に期待が持てます。

で 抜栓。

クリストフ氏のラインナップ中 例外的にこのキュヴェは全房発酵ですが、恐らくこれは、 “葡萄の量が少ないから果梗が必要” というより、 “葡萄を破砕したくないから 除梗出来ない” のでは無いかと思います。

ドメーヌ 《デュジャック》 ジャック・セイス氏も同じ考えで、ドメーヌ 《ジャック・プリウール》 ナディーヌ・ギュブランさんとは、相反する考え。

全梗発酵といえばDRC社オベール・ド・ヴィレーヌ氏、除梗発酵といえば 故アンリ・ジャイエ氏 といいたい所ですが、両氏は 状況により一番良い方法を取る、キュヴェによっても変えていると インタビュー等で仰ってますので、頑なな考え方では無いと思います。

出来がったワインを飲むと・・・・・どちらも正しいのです。

t02200391_0405072012427698810
            そして香りの洪水。

デリケートなワインなので、スワリング無しで、貴重な第一アロマを楽しみます。

まだまだ生き生きとしています。
こんなにも元気だとは・・・

軽くスワリング後、ようやく口に運ぶと 柔らかで滑らかな甘い液体が 何の違和感も無く喉 奥深くまで落ちて行きます。

ワインを飲んで得る久しぶりの感動。

ところが10分もすると香りは強くなっているのですが、味が ストン と抜け落ちた感じに・・・こんなにも早く終るとは・・・

と思ったのも束の間。

約10分後 再び口にすると、それこそ強靭という言葉でしか表現出来ない圧倒的な味覚が口内を埋めつくし、只者ではない奥の深さを見せつけられました。 (ただただ美味しい)

復活というよりここからが始まりだったのです。

8人で 93cc位 のワイン会でしたら この変化に気付く事は無かったかもしれません。

今回は4人での会でしたので1人約 180cc。

充分にその劇的変化を楽しむ事が出来ました。

恐らく 最高のヴィンテージが持つ 複雑さがこのヴィンテージに足りないのだとは思いますが、余韻は正にグラン・クリュのそれで 申し分無いです。

しかし それにしても 一度姿を消すなんて実に洒落てます。

t02200165_0450033812428710956

ドメーヌ ジョルジュ・ルミエ すべてのヴィンテージの《ミュジニー》を熟成させてから飲む事など私には出来ませんから、現時点でこのワインが私のルミエ《ミュジニー》の基準になります。

オフ・ヴィンテージでこんなに素晴らしいのなんて・・・ハードル高すぎます。t02200165_0450033812428710954というか、このレベルのワインになると 他との対比、比較が全く無意味に思えます・・・各ヴィンテージ毎、更に言えば一本一本が唯一無二、一期一会ですから。t02200391_0405072012428016845

t02200165_0450033812428711138

M L F・・・と三陸の牡蠣・・・

《Fermentation malolactique》という言葉を初めて聞いたのは、25年程前の事になりますでしょうか・・・

「マロラクティック発酵は・・・
リンゴ酸を乳酸菌の働きで乳酸に変化させる発酵のことで 酸をまろやかにする効果があります。」

今ならすぐに知ることが出来ます。

しかし当時は、ワインの教本やワインスクールは勿論、インターネット環境等、今なら当たり前の物が存在すらしていませんでしたから、意味など解らず 調べようもありませんでした。

造り手との会話の中に これらのワイン用語が出てきたら もうパニックです。

本当に便利な時代になりました。

さて、25年程前の話。

友人とパリの老舗レストラン《マキシム》で食事をする事になり 先ずは

“シャンパーニュ”

“フリュイ・ド・メール”
を注文。

テーブルに運ばれた生牡蠣にレモンを搾って食べようとしたところ 側に居た初老のソムリエ氏が止めに入ったのです。

「君が注文した シャンパーニュ《ランソン》はマロラクティック発酵して無くて、十分に酸味が有るからレモンは搾らなくても大丈夫だよ」

ほほう。

“マロラクティック発酵と云うものをして無い”

と どうなのかは知らないけれど、

“レモン無しで食べなさい”

と言ってる様な事は解りました。

ソムリエ氏、ずっと見てます。

仕方ないので言われるがまま 牡蠣を口に含み 良く冷えた《ランソン》(ノン・ヴィンテージいわゆるブラック・ラベル)で流し込むと・・・美味しい。

(レモンとリンゴ酸は共に殺菌作用が有り鉄分等の吸収を助ける要素もあるので、マロラクティック発酵をしていないワインと楽しむのは理にかなっているのですね)

酸味が素晴らしく生牡蠣に合ったと記憶しています。

その時に一般のフランス語辞書に出ている言葉でこの “フェルマンタスィヨン・マロラクティック” なる単語をソムリエ氏にご教授頂き、以来忘れられない言葉の1つになりました。

《マキシム》のソムリエ氏がもう1つお話をしてくれていました。

「君の食べている牡蠣、もともとは日本産だよ」

確か説明ではブルターニュ産と仰っていたはず・・・

話を聞くと、1970年代にブルターニュ産の牡蠣はウィルス性の病に見舞われ壊滅状態だったらしいのです。t02200367_0240040012417937813私がその夜《マキシム》で食した牡蠣は、一報を受けた 宮城県の方々が種牡蠣を義援したことにより 見事復活し、育った牡蠣だったのです。

その話を聞いてから20数年・・・

牡蠣好きで有名なルイ・ヴィトン家 5代目当主 パトリック・ルイ・ヴィトン氏が東日本大震災で壊滅的被害を被った宮城県に

「フランスが受けた40数年前の恩返しです」

といってブルターニュ産の種牡蠣をお贈り下さった事をニュースで知った時、パリの老舗レストランで聞いた日仏友好の話と、何故か「マロラクティック発酵」を昨日の事の様に思い出しました。

その後この話を忘れたことはほんの一時もありませんが、もう2年近く経ってしまいました。

近い将来、宮城県産の牡蠣を食されているフランスの方がいらっしゃったら ・・・今度は私がお話をする番です。

o0450033812428710624

ドメーヌ ベルナール デュガ ピィ・・・

ジュヴレイ シャンベルタン村において、対極にある造り手として良く名前があがる2人・・・村を代表する造り手の

《ドメーヌ アルマン・ルソー ペール・エ・フィス》 当主 エリック・ルソー氏 と

《ベルナール=デュガ・ピィ》 当主 ベルナール・デュガ氏。


(主にワインの色についての両論ですが、その点について正解の造りと言うものは無く、飲み手の好みの問題ということになるので、両極のワインが存在する事は 選択の幅が広がって楽しい限りです)

エレガントなワインを表現する為に、色よりも味と香りを優先して早期収穫を行う ルソー氏。t02200165_0450033812405304011
一方 抽出の度合いに拘りを持ち、パワフルで濃い(力強い)ワインを造る ベルナール氏。

私はどちらも好きですが・・・

t02200165_0450033812405304010
同じ村のワインとは思えない程二人のワインは違います。

(一時期 《ベルナール=デュガ・ピィ》のワインは大変な人気で、とても入手困難だったのですが 最近は随分と探しやすくなりました)

以前このブログで
「ドメーヌ カミュ ペール・エ・フィス・・・」
で マゾワイエール・シャンベルタンとシャルム・シャンベルタンのお話をしました。

その時に

「そういえば 《ベルナール=デュガ・ピィ》 も2004年ヴィンテージ位から それぞれのエチケットを張り 別々に出荷していたな・・・」t02200165_0450033812405304012という事を思いだしましたので、今回のブログタイトルとなりました。

ドメーヌ アルマン・ルソー と デュガ・ピィ 程の違いは無いかもしれませんが、こちらのシャルムとマゾワイエールも結構わかりやすいです。
《デュガ・ピィ》のシャルムはマゾワイエールの葡萄が何パーセントかアッサンブラージュされていますが、実際畑を見ると アッサンブラージュしているマゾワイエールの土壌はシャルムのそれとほぼ同じ、氏の所有畑は位置的にも 隣接しているマゾワイエール最北端なので、シャルムとして違和感無く受け入れられます。

少し南に下った所にベルナール氏が買い増ししたマゾワイエールの畑は、全くシャルムとは別物の土壌ですので、マゾワイエール単独仕込みの意味を理解することも出来ます。

やはり こうまで違うと別々のクリマ名を名乗らざるを得ませんね。


造りに関しても、除梗の割合が最大で30パーセント (マゾワイエールの方をエレガントに仕立てるため、梗を多く残している様で、結果 若干色が薄く仕上がります) 差が有り、それによりテロワールの微妙な違いを増幅表現しているので、土壌の違いと相まってかなり別物のワインに仕上がります。

 

しかしそれでも 法律上マゾワイエールはシャルムを名乗れるので、ブラインド・テイスティングでは厄介なること この上無く、2つの畑の水平テイスティングはとても意味がある事で面白いです。

ジュヴレイ・シャンベルタン村。奥が深過ぎます。

 

沢山の頂き物 2013・・・

元 エピスタッフの松下さんが、ワインの差し入れをしてくれました!

o0720040512403068463
流石に元スタッフ。わかってらっしゃる。

右から 《テタンジェ》 “プレリュード”。

2008年から単独で瓶詰めされるようになった ドメーヌ 《マルキ ダンジェルヴィル》ヴォルネイ1級 “クロ・デ・ザングル” その2010年。

(それまでは ヴォルネイ プルミエ・クリュ にアッサンブラージュされていました。恐らく葡萄の樹齢がドメーヌの基準に達したのでしょう、吉報ですね。   ワイン好きにとってラインナッツプが増える事は嬉しいことなのです)

数年前に ドメーヌ《ジョルジュ・ルミエ》がシャンボール・ミュジニー 1級 ”レ・コンボット” をリリースしてファンを喜ばせてくれたのは記憶に新しいところです。


3本目は そのドメーヌ 《ジョルジュ・ルミエ》
モレ・サン・ドゥニ 1級 “クロ・ド・ラ・ブシェール” 2010年。

ちなみに パニエに収まっているのは、エピからのお返し。

ドメーヌ 《ルイ・レミー》1986年 “シャンベルタン”グラン・クリュ。

ルーミエ以外(先月同じワインを試飲することが出来たので・・・)は、送り主の松下さんと早速抜栓して楽しみました。
ミキちゃん ありがとね!

先日お客様から頂いたエッフェル塔のペーパークラフトを仕上げました。t02200391_0405072012403460235

接着剤や留め具を一切使用せず綺麗に作るにはちょっとしたコツが必要でしたが、無事に仕上げる事が出来ました。
エッチングの技術はもとより、組み立てを進めるにしたがって自然に湾曲して拡がる 脚部分 の設計にはとても感心しました。

o0720040512403402507
ボルドーのワインをケースで頼むと、多くのシャトーは今でも木箱に入って来ますが ブルゴーニュワインの使用率は年々減って来ています。
「環境に配慮して」との大義もありますが、結果的に輸送コストの削減にも繫がりましたので、正解ですね。

個人的には木箱が好きですが・・・

新しいアイディアを試すときに、ブルゴーニュのような小規模生産体系は醸造、栽培、梱包、輸送などでフレキシブルに即時対応出来るので、変化が現れるまでに時間が掛かりませんし、上手くいかなかった場合のリスクも最小限に抑えることが出来そうです。

Sさん高価な かじりかけの林檎 有り難う御座いました!

お陰様でブログの更新頻度が上がりそうな予感がしています・・・予感です・・・・・・あくまでも・・・・・・・・・がんばります。