月別アーカイブ: 2013年10月

ドメーヌ シモン・ビーズ 当主 パトリック・ビーズ氏・・・ テーマ:ワイン

10月10日、運転中の心臓発作が原因で交通事故を起こし、
昏睡状態のまま10月20日に亡くなった
パトリック・ビーズ氏。

2010年6月 渡仏の際
ドメーヌ ジョルジュ・ルミエの
地下セラーで御会いしたパトリック氏は とてもサービス精神旺盛の親切な方で、
その日の午後
サヴィニーに在るパトリック氏のドメーヌに伺った時、とても精力的に畑仕事をこなしてらっしゃったのが印象的でした。

61歳という若さでの突然の悲報。

ドメーヌ シモン・ビーズとファックスでのやり取りをしている最中の出来事でしたので、驚きを通り越して愕然としてしまいました。

パトリック・ビーズ氏の御冥福を心からお祈り申し上げます。

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エピでもお馴染みの
ドメーヌ シモン・ビーズ
サヴィニー・レ・ボーヌ
プルミエ・クリュ
オー・ヴェルジュレス。

Au revoir monsieur BIZE.

Avec encore un immense merci du fond du coeur.

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オリジナリティ・・・

日本の古典芸能、

落語。

皆様良くご存じの通り、一口に落語といっても様々な噺があるわけですが、
噺家さんによって、というよりは
流派、亭号によって
同じお題の噺でも少し、若しくは全く違う噺にかえて 独自な作品に昇華させています。
例えば、表現方法、時代考証をかえてみたり、
性別設定を少しいじってみたり、

さげ(おち)自体を変えてくる事もあります。

つまり 同じ 「饅頭こわい」 でも

「今度は熱い御茶がこわい」
だったり、

「今は渋い御茶が一杯こわい」
でさげてみたり。

立川流 故 立川談志師匠などは

「何がこわいんだい!」

「おちゃがこわいよ~」

と勢いで締めたりしていました。

落ちを聴いただけで何処の流派かわかったりするのですが、どなたの噺を聴いても全く違う噺のようで実に良いものです。

ですが長らく落語を聴いていますと、自然と「好み」というものが出てくるものでして、またそこにハマるのです。

「芝浜」は 三代目古今亭志ん朝 が一番。

という人は、「芝浜」を聴くときは、古今亭一門の「芝浜」を聴く。

とか いやいや柳家小三治だよ とか
六代目三遊亭円生を忘れてはいけないよ。

とか、熱狂的ファンが多いです。

演者さん(亭号)が大事ということですね。

熱狂的ファンといえば
ブルゴーニュワインの世界と、

相通じる所があるのでは?

などと勝手に思っています。

愛好家は 例えば、6月に葡萄畑に出向き、
リシュブールか
ロマネ・サン・ヴィヴァン、
エシェゾーを眺めてみる。
ひときわ 新梢を伸ばしっぱなしにしている、つまりロニャージュしていない畑は、

ドメーヌルロワか

ドメーヌ ティボー・リジェ・ベレールか

ドメーヌ ジャン・イヴ・ビゾーですから、ある程度 所有畑を特定することが出来ます。

同じ葡萄品種から造られるワインでも
ブルゴーニュほど 造り手によって
仕上がりに差が出る産地も なかなか無いといわれています。

しかし逆もまた真なりで、違う造り手でも 目指す完成形が同じなら、出来上がるワインもそう違わない仕上がりになるのではないでしょうか。

先日 出先で頂いた

ドメーヌ ダヴィド・デュバンの
シャンボール・ミュジニー
ヴィラージュ2009年と

ドメーヌ オーレリアン・ヴェルデの
ニュイ・サン・ジョルジュ
プルミエ・クリュ オー・ブード
2006年。

ヴィンテージも畑も造り手も全く違うのに、どことなく繋がりを感じるワインでした。

元グランプリ・ライダーだった
オーレリアン氏をワインの道に誘い、
父親であるアラン・ヴェルデ氏の後を継がせたのが
他ならぬダヴィド・デュバン氏。

オーレリアン氏は ダヴィド・デュバン氏の元で研修を受けた事もあり、
エチケットの配色、配置にリスペクトの念が込められている様にも思えます。

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ワインもまた然りで、抽出は濃くなく、
ミネラル感と余韻の佇まい、
清潔感溢れるその感じは
正にドメーヌ ダヴィド・デュバンのそれで、同門の気配が感じられました。

私が その事を知っていたから 無理矢理に近似値を探そうとして こじつけ たのかもしれませんが・・・知っていたからこそ、この2本を開けたとも言えますので・・・

いやはや実にブラインドで試してみたい
2ドメーヌですね。

手前事ですが、今回のブログを

エピの御客様で、うどんと蕎麦の食べ方の違いを実演して教えてくださった
大先輩。

10月7日に55歳の若さで亡くなった
七代目 古今亭志ん馬師匠に捧げます。

馬による耕作・・・

トラクターが無い頃は、畑を耕すのは、人力か馬耕作が当たり前でした。

機械が進化し、70年代80年代90年代は普通にトラクターが活躍するようになりましたが、今現在 再び馬で畑を耕しているドメーヌが増え始めているようです。

とてもコストが掛かる方法ですので 資金面で余裕の有るドメーヌしか実現できないのが現実です。

コマーシャルの為だけにおこなっていたドメーヌもあったそうですが、理由はともかく 畑のためには少なからず良かったのではないでしょうか。

馬を使うメリットは3つあると言われていて、ひとつは

トラクターよりも軽量なので
「畑の土を踏み固めない事」なのですが、

軽量といっても 実は大して重さは変わりません。

ただ 馬ですと、四点で踏むだけなので トラクターの様に
畑の端から端まで連続して踏み固めることがなく、
傾斜面でも横転の心配が少なく、
土に空気を取り込み、
環境にも優しい。

デメリットは馬の管理、
管理する為の人件費、
馬を教育するまでの期間が必要なこと。

でしょうか。

馬耕作専門のエリック・マルタン氏が興した会社もありますが、応対しなけばならないドメーヌの数が増えて 順番待ちをしなくてはならない昨今、ある程度 資金力に余裕の有るドメーヌは自己所有していますね。

ドメーヌ アルローの
シプリアン・アルロー氏、

ドメーヌ デュ・コント・リジェ・ベレールの
ルイ・ミッシェル・リジェ・ベレール氏、

ドメーヌ ド・シャソルネーの
フレデリック・コサール氏・・・

多くの方々が耕作のために馬を飼っています。

そんななか さらに資金力が豊富な
ドメーヌ。

たとえば DRC 社。

ここは また桁違い。
なんと軽量で、環境に配慮した
トラクターを開発、造らせました。

とはいえ
ロマネ・コンティと
モンラッシェだけは、
ミッキーが耕します。
きっと何年か後、
「やはりDRCは先見の明があったね」
といわれるのでしょうね、1977年 選果台を導入した時のように。

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ワイン愛好家として こういった興味深い話、たとえば 馬での耕作の他にも リュット・レゾネか
ビオロジーか
ビオ・デナミなのか

除梗発酵なのか
全房(全梗)発酵なのか等ありますが、

しかしそれらの話題、
もし ”生産者が優良” なら、
造り手サイドから話されることはほとんどありません。

質問すれば勿論答えてくれますが、それだけです。

全ては試行錯誤中の事ですし、
キュヴェ、
畑、
作柄、
つまり年によって変えなければならないことなので、一概には説明出来ないのも 生産者から話が無い要因のひとつだと思いますが、

“当たり前の事はわざわざ言わない”

が正解だと私は思っています。

私ですら、野菜が 有機栽培であるとか、ワインがビオ・デナミだとかオーガニックであるとか 取り立てて言いません・・・

既に当たり前の事ですから・・・

さらに 収穫した葡萄をドメーヌまで運ぶときに、保冷車を使用し 運搬中の劣化を防いでいるドメーヌも増えてきています。

2003年の暑かった夏には保冷車の恩恵もあり
ドメーヌ シャソルネー、
デュガ・ピ などは他のドメーヌに相当差をつけていました。

ワインを選ぶときの判断材料のひとつとして知っておいて損はありません。

ブルゴーニュワインがここ10年 飛躍的に進化した理由がわかりますね。