ブルゴーニュで一番最初に開墾された畑を有する村。
今現在、フランス全土と世界中の著名ワイン産地に浸透している 《クリマ》の基本概念を最初に確立した土地。
ナポレオン1世。ボナパルトが愛飲していたとされているワインの生産地。
コート・ドールのグラン・クリュ最北端。
ブルゴーニュ最大の葡萄畑面積の中に1つの村としては最多の9つの特級畑。
などなど沢山の枕詞を持つ事で ヴォーヌ・ロマネ村と双璧を成し、そして何よりブルゴーニュワインに興味を持った時、先ず最初に立ちはだかる壁。
ジュヴレイ・シャンベルタン村。
何故か?
先ず例えば、クロ・ド・ベーズはシャンベルタンを名乗れるがその逆は不可・・・とか、マゾワイエールはシャルムを名乗れるとか・・・決まり事に対しての例外が多く、覚えなければならないことが沢山有る。
(そもそも これらの畑には 表土、土壌の違いやコンブ・グリザールからの冷涼な風の影響など、品質に変化をもたらす要因が数多く含まれているのに、なぜ同じクリマ名を名乗れるのか?)
商業的な理由でこの様にカテゴライズされているのでしょう、例えば マゾワイエールの畑を持っている造り手の殆どは 出来上がるワインに「知名度の高い」シャルム・シャンベルタンのエチケットを貼って出荷します。
その方が売りやすいから・・・
そんなジュヴレイ シャンベルタン村でテロワールの違いを尊重し、”マゾワイエール”は”マゾワイエール”。
”シャルム”は”シャルム”として出荷している造り手は 恐らく一人か二人。
1732年まで記録を遡れる歴史ある名家。
ドメーヌ カミュ・ペール・エ・フィス
当主 ユベール・カミュ氏。
最新の醸造技術を使わず、昔ながらのブルゴーニュスタイルでワインを造り続ける姿勢は常に賛否両論を呼んでいますが、単純に畑の違いを知りたい時、ストレートに造られたこのドメーヌのワインだけがそれを教えてくれます。
先日抜栓下さったMさん、2001年のマゾワイエール・シャンベルタンはいかがだったでしょうか?
シャルム・シャンベルタンと飲み比べをしてみても良かったですね。
きっとマゾワイエールに緻密なテクスチャーを感じたと思います。
蛇足ですが、3年ほど前に抜栓した1992年のドメーヌ カミュ・ペール・エ・フィス 《シャンベルタン グラン・クリュ》 マグナムボトルの優しく、それでいてパワフルだった味わいは今でも覚えています。
とても良かった。
それ以来 私はこのドメーヌに対して「賛否で言うなら”賛”」の立場です。
こういう生産者が1人居てくれるお陰でブルゴーニュワインは面白いのです。1990年 フランス政府は、長年ブルゴーニュワイン発展の為に貢献した実績を讃え、最高の栄誉である<レジョン・ドヌール>をユベール・カミュ氏に叙勲しました。
決して押しの強いワインを造らない、人間的にも謙虚なユベール・カミュ氏が コルドン・ルージュを身に付けて外出する事は無いと思います。
ワインと造り手の人柄との整合性。
このブルゴーニュワインの決まり事に例外は無いのです。