9月24日からはじまった収穫。
8月の第三週までは “例外的に偉大な年” を予感させていた 1994年。
病害も少なく、シャブリ地方以外は霜による被害も無いという稀にみる良い年を迎えるはずだった ブルゴーニュ地方。
しかし 収穫からさかのぼること30日、コート・ドールに雨が降りました。
降り続きはしなかったそうですが、9月上旬の不安定な天候により葡萄にとって一番大切な収穫前の30日間の日照時間が200時間に満たなかった為、 ヴィンテージ・チャートではあまり良く書かれていません。
記録によると160時間から180時間の間。
(逆に200時間を越えて、暑すぎても葡萄にはよろしく無いので 造り手の方々にとって 収穫前の30日間は気がきではないでしょう)
しかし それだけの日照時間だったにも関わらず 葡萄の糖度はまずまずだったそうです。
ブルゴーニュワインの最大の魅力である”糖度と酸”のバランスは若干崩れたのかもしれませんが、一流の生産者はどの様にこのヴィンテージを仕立てたのでしょうか。
ドメーヌ ジョルジュ・ルミエ
《ミュジニー》グラン クリュ
1994年。
19年熟成させた、天才的醸造家 クリストフ・ルミエ 氏の手による、特級畑ワインならばそれを知るための個体としては悪くないと思います。
さて2月19日に行った今回のエピ ワイン会、ライン・ナップは・・・
シャンパーニュ・・・
《ポル・ロジェ》の トップ・キュヴェ
“サー=ウィストン・チャーチル”
1999年。赤ワイン・・・
ドメーヌ ジョルジュ・ルミエ
《ミュジニー》グラン・クリュ
1994年。
(その他にシャンベルタン村のグラン・クリュ1本と 参加者から頂いたメゾン ルロワの広域ワイン1本で計4本)
《ポル・ロジェ》の”サー=ウィストン・チャーチル” 1999年はもうすぐ新しいヴィンテージ 2000年がリリースされるので、駆け込み寺的なチョイスです。
ピノ・ノワール比率が高いキュヴェですから しっかりと重厚感があり、色も深みのある黄金色で、決め細やかな泡が喉に与える柔らかな刺激は高尚の一言。
そして複雑な果物の香りがテーブルを覆いました。次なるワインへの繋がりを考えると、最高の選択だったと思います。
そして メインのワイン・・・
まさか このワインをエピで抜栓する日が来るとは思ってもいませんでした。
19年前に最高の畑から収穫された “ピノ・ノワール・ア・ジュ・ブラン” を一流の造り手が醸造、瓶詰めした 逸品。
値段もさることながら、現存する個体が少ないので”超”が付くほど貴重なワインだと思います。
《ミュジニー》グラン・クリュ
優良年ですと19年熟成は まだまだ早い (2000年代の物は生きているうちに飲めるかどうか・・・) と思われる抜栓タイミングですが、94年はいわゆる 普通の年 という評価なので、逆に期待が持てます。
で 抜栓。
クリストフ氏のラインナップ中 例外的にこのキュヴェは全房発酵ですが、恐らくこれは、 “葡萄の量が少ないから果梗が必要” というより、 “葡萄を破砕したくないから 除梗出来ない” のでは無いかと思います。
ドメーヌ 《デュジャック》 ジャック・セイス氏も同じ考えで、ドメーヌ 《ジャック・プリウール》 ナディーヌ・ギュブランさんとは、相反する考え。
全梗発酵といえばDRC社オベール・ド・ヴィレーヌ氏、除梗発酵といえば 故アンリ・ジャイエ氏 といいたい所ですが、両氏は 状況により一番良い方法を取る、キュヴェによっても変えていると インタビュー等で仰ってますので、頑なな考え方では無いと思います。
出来がったワインを飲むと・・・・・どちらも正しいのです。
デリケートなワインなので、スワリング無しで、貴重な第一アロマを楽しみます。
まだまだ生き生きとしています。
こんなにも元気だとは・・・
軽くスワリング後、ようやく口に運ぶと 柔らかで滑らかな甘い液体が 何の違和感も無く喉 奥深くまで落ちて行きます。
ワインを飲んで得る久しぶりの感動。
ところが10分もすると香りは強くなっているのですが、味が ストン と抜け落ちた感じに・・・こんなにも早く終るとは・・・
と思ったのも束の間。
約10分後 再び口にすると、それこそ強靭という言葉でしか表現出来ない圧倒的な味覚が口内を埋めつくし、只者ではない奥の深さを見せつけられました。 (ただただ美味しい)
復活というよりここからが始まりだったのです。
8人で 93cc位 のワイン会でしたら この変化に気付く事は無かったかもしれません。
今回は4人での会でしたので1人約 180cc。
充分にその劇的変化を楽しむ事が出来ました。
恐らく 最高のヴィンテージが持つ 複雑さがこのヴィンテージに足りないのだとは思いますが、余韻は正にグラン・クリュのそれで 申し分無いです。
しかし それにしても 一度姿を消すなんて実に洒落てます。
ドメーヌ ジョルジュ・ルミエ すべてのヴィンテージの《ミュジニー》を熟成させてから飲む事など私には出来ませんから、現時点でこのワインが私のルミエ《ミュジニー》の基準になります。
オフ・ヴィンテージでこんなに素晴らしいのなんて・・・ハードル高すぎます。というか、このレベルのワインになると 他との対比、比較が全く無意味に思えます・・・各ヴィンテージ毎、更に言えば一本一本が唯一無二、一期一会ですから。