優良生産者とは、どのような造り手の事を指すのか。
色々な厳しい条件をクリアしている人達と言うことは想像がつきますが、少し具体的に・・・
ひとつの例として、優良生産者と普通の生産者を分けた有名なヴィンテージがあります。
1986年ヴィンテージ。
収穫日間近に雨が降り始め、当時の天気予報でも 「雨はやまずに降り続ける」とアナウンスがあったそうです。
若干葡萄の熟成度は足りなかった様ですが、背に腹は代えられません。
取り返しのつかないことになる前に 慌てて収穫を済ませた生産者が多かったのです。
方や、
「この葡萄でワインを造っても良いものは出来ない」
と考え、雨で葡萄が全滅するかもしれないリスクを甘受し、良いワインを造るためだけに 収穫をせず、葡萄に栄養を与え続けた 度胸ある賭けをした生産者も居ました。
さすがに収穫量は大幅に減少しましたが、
結果は 後者の圧勝。
降り続くはずだった雨は、翌日あがったのです。
1986年のヴィンテージ評価(チャートではなくワイン自体の評判)は決して良いものでは有りませんが、それは 圧倒的に前者の数が多かったからで、遅摘みに成功した後者の いわゆる優良生産者が造った1986年のワインは凝縮感に満ちた香りの高い、最高のワインです。
ワイン造りに関して柔軟性があり、または融通のきく造り手。
それこそが優良生産者の資質ではないでしょうか。
(農作物、ワイン造りに同じ条件の年は、ただの一度も無いのですから 杓子定規で考えるのは御法度です)
前途しましたが、それに加え 状況判断力。
今現在、世界的に著名な優良といわれている生産者は この条件を雲上の遥か高いレベルでクリアしている人達です。
故 アンリ・ジャイエ氏が
「1986年ヴィンテージは印象に残る、思い入れのあるヴィンテージ」
と仰った理由。
お分かりいただけたかと思います。