月別アーカイブ: 2013年6月

2011年のヴィンテージ評価・・・

ヴィンテージ・チャートを、
毎年 世界に先駆けて発表しているのはアメリカのワイン誌です。

なぜ どこよりも速く記事に出来るのか。

まだワインが樽に入っている状態の時に、その年の作柄を決めているのです。
つまり、ワインの味覚云々より、その年の気象条件のみで判断されていると言っても過言ではありません。

(速くないと、投機的にワインを捉えているアメリカ市場には意味が無く、 オフ・ヴィンテージの烙印が押された年のワインは購入を控えます)

ワインになってからの味覚などで判断されたチャートではありませんから、鵜呑みにするべきではありません。
その年がどのような天候だったのかを知る為のガイド的な捉え方で充分だと思います。

これは 特にブルゴーニュ地方にいえる事ですが、ワインの出来、不出来は 生産者毎に考えるべきで、例えば、先日お会いした
ドメーヌ ユドロ バイエ
当主 ドミニク・ル・グエン氏の2004年は絶品でしたが、数多あるヴィンテージ・チャートの2004年評は決して良い物ではありませんでした。

2008年、2009年、2010年、2011年と毎年全く違う気象条件だったのですが、ワインの出来は、年を追う毎に確実に良くなっています。

葡萄の栽培、ワイン造りの経験値 積み重ねによる生産者のスキル向上も理由の1つです。

(2010年と2011年はキャラクターが違いすぎて比べるのはナンセンスだとも思いますが・・・)

2012年に訪問させていただいたドメーヌ当主 多くの方が、もう一度造りたいヴィンテージのひとつに2011年を挙げていたのが印象的でした。
生産者の言葉には重みがあります。

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恐らく幾つかのヴィンテージ・チャートでは 2011年ヴィンテージは
2010年ヴィンテージより評価が低いかもしれません・・・天候が優れなかった日が多かったそうですから・・・

でもしかし、2004年ヴィンテージからのインポーター各社主催の試飲会に毎回お邪魔させて頂いている経験から申しますと、ブルゴーニュ 優良生産者の2011年は凄いことになっています・・・

お確かめ下さい。

ドメーヌ ユドロ・バイエ 当主 ドミニク・ル・グエン氏来日・・・

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正規代理店主催による生産者来日に伴い行われた試飲会にお邪魔して参りました。

昨年6月にドメーヌを訪問させていただいた、シャンボール・ミュジニー村の造り手で、今や割り当でしかワインを入手することが出来ない程人気のドメーヌ。

当主 ドミニク・ル・グエンさんです。

(上の写真は、今年になってようやく購入出来た2011年 ボンヌ・マール グラン・クリュを樽から頂いているところ)

ドメーヌには当時、瓶詰めされた個人販売用のストックが全く無く、泣く泣く購入を諦めていましたが、インポーター社のご厚意で今年入手することが出来たのです。

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念願叶って2011年のボンヌ・マール グラン・クリュのエチケットにサインを頂きました。

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話は前後しますが、ドミニク氏、お会いするなり
「去年うちに来たよね」とお声掛けいただき、1年前に2日会っただけの私を覚えていて下さったのには本当に驚きました。
嬉しかったです。


来年にドメーヌ訪問のアポイントを頂戴しましたので、必ずお邪魔させて頂きます。

ドミニクさんありがとうございました!

貴重な機会を与えて下さったヌーヴェル・セレクションの川口さん、重ねて御礼申し上げます。

20年ぶりの地・・・

友人のフランス人、
マーク・ボナー氏が王子駅のすぐそばで、ビストロ・フレンチをオープンして一年が経ちました。

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マークさんが独立を決めた時から相談を受けたりしていたので、我が事の様に嬉しいです。

そしてその一周年を御祝いをする為、エピ定休日を利用し、夕食を兼ねてお邪魔して参りました。

《ビストロ・ド・マーク・オージ》

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車好きのマークさんとは料理の話と同じテンションで趣味の話が出来るので、いつも ついつい長話しになります。

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カウンターに席を取れば
セミ・オープンのキッチンからマークさんの仕事ぶりを見ることが出来ます。

真面目な彼を初めて見ました・・・と言うのは冗談です。仕事はいつだって真剣ですよ。

フランス人らしいパワフルなアセゾネは、グラスで頂いた
ピノ・ノワール
《ドメーヌ ル ー ペール・エ・フィス “レ・グランド シャルミール”》
2010年。に良く合いました。

マークさん、とても良いお店になりましたね。
一周年おめでとうございます。

ちなみに私の方が3歳年上ですが、貫禄はマークさんの方がありますね。

身長は私が181㎝、
マークさんは、193㎝。

二人でキッチンに入ると一気に空間が無くなります。

Rothschild・・・

ブルゴーニュでは、オーナーの名前が会社名というか、ワイナリー名になっているのが当たり前ですが、もうひとつのフランスワイン銘譲地 ボルドー地方の有名どころで、
オーナー名がワイナリー名に組み込まれているのは たったの2件。


《シャトー・ムートン・ロッチルド》
若しくは、《ロートシルト》
または、《ロスチャイルド》

5大シャトー格付け筆頭の
《シャトー・ラフィット・ロッチルド》
以下同文。

国により《Rothschild》は上記の通り発音が変わりますが、どの読み方も日本では知られていますね。

ちなみに
《ムートン》と
《ラフィット》は同族の別人が所有しています。

ドイツ生まれの金融王
マイヤーA・ロートシルトの5人の息子のうち、
イギリス系のナサニエル男爵、
フランス系のジェームス男爵が
シャトー

(前者が《ムートン》、
後者が《ラフィット》)

を購入しました。
シャトーの名前に《Rothschild》を名乗ることは、当時そのワインに更なる付加価値を与える事になったそうです。

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その後、

ナサニエル男爵の曾孫の故バロン・フィリップ・ロートシルト氏が様々な改革をもたらし、現在の《ムートン》の地位を確立したことは皆様ご存知の通りです。

一方ブルゴーニュ。

1967年 フランス政府はドメーヌがひとつの畑のワインしか 作っていない場合をのぞき、畑の名称をドメーヌ固有のものとして使用する ことはできないと決定したそうです。

ヴォルネイ村1級の有名な畑、
クロ・ド・ラ・プス・ドールを
当時モノポールで所有していた、
ニコラ・ポテル氏の父上
故ジェラール・ポテル氏のドメーヌは1967年までドメーヌ名と畑名が同じでしたが、上記の理由で変更を余儀なくされました。

ジェラール氏は、その有名な畑名
《クロ・ド・ラ・プス・ドール》の方を
ドメーヌ名
(《ドメーヌ ド・ラ・プス・ドール》)
として残し、

ドメーヌ名はそのままに、
畑名を《クロ・ド・ラ・ブス・ドール》に変えてしまうという逆転の発想的 荒業にでて、それを認めさせました。

(マット・クレイマー説、ロバート・パーカー・ジュニア説、諸説あるこの話ですが、2010年にお会いしたニコラ・ポテル氏に直接 事の真偽を確かめた所 上記の内容でした)

ところで、

《ドメーヌ デュ・クロ・デ・ランブレイ》

《ドメーヌ ド・ラ・ロマネ・コンティ》

も畑の名前をドメーヌ名にしていますが、全くおとがめ無しのようです・・・

フランスは例外が多いです。

テロワール・・・

ロバート・パーカー・ジュニア氏は、
1987年の
《ドメーヌ ジャン・グリヴォ》
〈エシェゾー グラン・クリュ〉に対して

「見事な出来ではあるが、エシェゾーの味がしない。芳醇で強い味わいの見事なワインであるけれど、ピノ・ノワールとは本来こういったものだっただろうか?」と評論しました。

恐らくパーカー氏好みのワインだったに違いありません。
色合いも濃く、液体の濃度に比例したアルコール度数の高さ、何よりもエルミタージュかコルナスでも口にしているかの様なシラー種を思わせる余韻の力強さ、が備わっていたワインですから。

実はブルゴーニュ、
いや ピノ・ノワール種を敬愛しているパーカー氏は言葉の外で
「でもそれなら シラー種のワインを飲めば良い」と仰ったのではないかと・・・

ギイ・アッカ氏のコンサルティングによって出来たそのワインは、間違いなく美味しかったのだと思います。
ただブルゴーニュらしく無かった・・・
エシェゾーではなかった。

ロバート・パーカー・ジュニア氏の
《ザ・ワイン・アヴォケイド》
65号で書かれたこの記事内容が、
その後のブルゴーニュワインと 醸造技師ギイ・アッカ氏の去就を決めたといっても過言ではありません。

テロワールという言葉が、今のように言われ始めたのは、この頃からだった様に思います。

o0405072012567074875(ワイン誌に土壌やこの様な石炭岩の写真が掲載されるようになったのは、ここ何年かの事です)

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今現在は、諸般の事情によりブルゴーニュと距離を置いているパーカー氏ですが、テロワールを表現している今のブルゴーニュワインを陰ながら喜んでいる一人に違いありません。

ドメーヌ ファブリス・マルタン・・・

県道974号線を北から下り、最初にヴォーヌ・ロマネ村へ入る道を右折。

車で少し走ると《ドメーヌ ファブリス・マルタン》のとても小さなドメーヌが在ります。

そのワイン、日本ではあまり有名で無いのですが、ドメーヌ自体はある理由で知られています。

向かって右隣の白い家が 故アンリ・ジャイエ氏の御自宅だったのです。

(今はどなたかジャイエ氏の親戚の方がお住まいになってます)

既にアンリ・ジャイエ宅の表札、その他は取り外されているので、
氏の元の家は特定しにくい状況・・・

そこで《ドメーヌ ファブリス・マルタン》のドメーヌを目印に探すようになり 、多くの人に知られるようになりました。
勿論ワインも美味しいですよ。

ファブリスと、いえば・・・

その元の国道74号線をヴォーヌ・ロマネ村に曲がらず更に真っ直ぐ進むと、《ドメーヌ ヴィゴ・ファブリス》があります。

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日本では 《ドメーヌ ファブリス・ヴィゴ》と言われていますが、
フランスではというか本来は、
《ドメーヌ ヴィゴ・ファブリス》です。
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こちらは、ドメーヌ近くのご自宅。

その《ドメーヌ ヴィゴ・ファブリス》、

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1966年から
《ドメーヌ ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール》からの
メタイヤージュをきっかけに興されたドメーヌで、今現在は、
ご主人と夫人のクリスティーヌさんがワイン造りをしています。

 

メタイヤージュの畑、トップ・キュヴェは
〈エシェゾー グラン・クリュ〉、
リュー・ディは、
〈レ・ルージュ・デュ・バ〉

同じ畑の
《ドメーヌ ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール》の
〈エシェゾー グラン・クリュ〉と比べると、圧倒的に後者の方に軍配が上がります。

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理由は、
リュー・ディ
〈レ・カルティエ・ド・ニュイ〉から造られるエシェゾーと
等分でアッサンブラージュし、複雑味を持たせているから。

地主の強味ですね。

一方《ドメーヌ ヴィゴ・ファブリス》は単一区画からワインを造るしかなく、複雑さに欠け 一歩及ばない感が拭えません。

借地耕作をしてはいますが、ワイン造りに関しては 一切交流が無いらしく、同じコート・ド・ニュイでも意見交換が盛んなシャンボール村のヴィニュロン達とは随分とご近所付き合いのスタンスが違うようです。

ヴォーヌ・ロマネ村のヴィニュロン達の印象は、個人主義(エチエンヌ・グリヴォ氏、ミッシェル・グロ氏を除く)の孤高な造り手が多い様な気がしていますが、皆様の印象はいかがなものでしょうか。

話はそれますが、
《ドメーヌ フランソワ・ラマルシュ》
《ドメーヌ アンヌ・グロ》
《ドメーヌ ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール》
の3ドメーヌは隣り合っていて、偶然にも3軒とも女性が当主を務めていますね。

ついでに言うと、この3ドメーヌから造られるワインは、どれも一流の素晴らしい作品ばかりです。

1983年 シャトーマルゴー プルミエ・グラン・クリュ クラッセ・・・

俗に言うボルドー5大シャトーは、出物が有れば手に入れる様にしていますが、その中でも 今現在
エピのワインリストで一番のオールド・ヴィンテージが1983年です。


エチケットの状態は良くありませんが、今晩ご注文、お裾分け頂いたワインはエピ入手前から非常に素晴らしい保存環境にあったらしく、天国で飲ませてくれるワインのリストがあるとすれば、その中に きっと このマルゴーも入っているに違い有りません。

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ほのかにかおるカカオ香、つつみ込むような液体の濃度に圧倒されます。

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ネガティヴな要素は全く感じられず、
経年による”こなれ感”は本来 高嶺の華であるはずのこのワインを身近なものに変革させ、価格を考えなければ非常にフレンドリーに対峙することが出来ました。

ボルドーワインは、やはりこのくらい熟成させてから飲むのが良いですね。

Hさん 有り難う御座いました。

ドゥミ・ブテイユ・・・

ハーフボトルの事です。

容量は375ml。


ブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュ地方で呼び名と容量、ボトルサイズは若干違う部分もありますが、この2~3サイズ上位までは全部同じです。

そういえば熟成樽の容量と呼び名も違ってきますね・・・228Lのピエスであったり、225Lのバリックであったり・・・


ボトルサイズが小さい程、熟成のピークが早く来ると言われていますが、熟成云々関係無く ただ単に沢山飲めないときにオーダーすることが多いいサイズです。


先日試飲した、
デュジャック、1999年のシャンボール村名ブテイユ(750ml)と熟成の具合というか加減を比べてみたくて、

大手メゾン ルイ・ラトゥール社の1999年シャンボール村名
ドゥミ・ブテイユを抜栓、試飲したところ、
(違う造り手のワインでずが)
やはりヴィンテージ・キャラクターを鑑みてもかなり熟成が進んでいました。


2005年辺りのドゥミ・ブテイユ ワインなら、飲み頃が近づいているかもしれませんね。

2005年。
ブテイユはまだまだ飲みにくいです。

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既に古酒の風合い。

マリアージュ・・・

ペリゴール産のフォアグラと
イタリア産サマートリュフを
メニューに加えたところ、
大変 好評頂き、即日完売となりました。

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フォアグラとのマリアージュの定番は(フランスワインで考えると)ソーテルヌのワインと言われていますが、

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なるほど
テリーヌ・ド・フォアグラならそうかも知れませんが、
フォアグラ・ポワレをヴィネガーを効かせたサラダ仕立てにするなら
ブルゴーニュの白。


ポワレしたフォアグラに
フルーツのコンフィチュールを添えて、
フォン・ド・ヴォーと
シェリー酒ヴィネガーの2種ソースで
(エシャロット、パセリ、ニンニク使用)
熱々を食するのなら少し熟成の進んだブルゴーニュの赤。


ニンニク無しなら
コート・ド・ニュイでいきたい所ですが、この場合
ヴォルネイの赤ワインが合うでしょうか・・・

ポワレするときに、胡桃オイルを使い
ソース・ポワヴル・ヴェールで提供するなら
ボルドー・ワインも選択肢に入ってきます。

オリーブ・オイルでの調理なら
ラングドック・ルーション、
コート・ド・プロヴァンスも良く合います。

ニンニクを使わず、
ソースをリエゾンするときに、
少し多目にクリームを使うなら、
シャンパーニュも選択肢に上がります・・・

理屈では・・・


しかし、グラス形状、提供温度、ソース、調理過程での食材の選び方、付け合わせの工夫ひとつで、ワインを料理に引き寄せる事が出来、俗に言うマリアージュの既存概念は一気に吹き飛びます。

4人のゲスト、
全員違うア・ラ・カルト料理、メインは魚料理、肉料理 各2皿ずつ、ワインはボトルで赤1本。
というか、
まず飲みたいワインが決まっているテーブル。

非常に良くあるシチュエーションですが、この様な場合でもグラス選びと提供温度で、ほとんどの料理に対応出来ますし、料理人がオーダーされたワインを知れば、上記の調理方法の応用でいかようにも対処でき、逆に料理をワインに近づける事も出来ます。

どうぞお好きなワイン、
お好きな料理を選んで下さい。

飲みたいワインと食べたい料理が後付けの理屈で楽しめなくなるほど、フランス料理の文化やワインの懐は浅いものでは無いのです。


知識は有って邪魔にはなりませんし、私達レストラン側が知っているのは当然の義務ですが、ソムリエ世界大会で勝つために必要な知識をレストランで食事を楽しむ時に振りかざすのは、正解とは言えません。

組み合わせを考えてメニューを決めるのも楽しみのひとつですが、固定観念が過ぎるのは考えものですね。

他人が決めた組み合わせは参考程度に留めておくのが、精神衛生上宜しいのではないでしょうか。

トマトやコロッケの食べ方ひとつ取っても10人寄れば、最低でも4種類の調味料の名前が上がりますから・・・

色々と試し、是非とも自由にお楽しみ下さい。

 

F V B・・・

Femmes et vin de Bourgogne
の略です。

39ドメーヌ40人からなる、ブルゴーニュ女性醸造家のコミュニティ。

このブログでもお馴染みの女性醸造家達も参画しています。

例えば、コート・ド・ニュイなら


アンヌ・グロさん

ファビエンヌ・ボニーさん

セシル・トロンブレイさん

など 錚々たる面々。

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コート・ド・ボーヌに目を移せば
ドメーヌ ジャック・プリゥール
訪問時にお会いした
ナディーヌ・ギュブランさんも
メンバーのひとりです。


この様に 例えば、
同じ村のヴィニュロンとは距離を置いている造り手も、”隣村のヴィニュロンとなら” コンタクトを取っていることは往々にしてあるようです。

同村同士ではライバルになってしまうのでしょうね。