ドメーヌを訪問して、然るべき挨拶のあと、カーヴに向かう階段を降りると暗闇の中、独特な湿度と冷気、蔵独特の懐かしくも心地好い 匂いに包まれます。
当主の方が、やおら明かりを灯すと目の前にはワイン愛好家を魅了する憧れの光景が・・・
もしその瞬間 心の中で「お~っ」と言葉がもれたのなら、
間違いなくそのワイン樽は
《フランソワ・フレール社》製です。
同社の中でも色々な外観仕様があるのですが、どれも素人目に見て凄く綺麗で、なぜだか とにかく目を惹きます。
フランスの樽メーカーは、
《カデュス》
《ルソー》
《キャヴァン》
《ソーリー》
《タランソー》
《セガン・モロー》
《エルミタージュ》
《ベルトミュー》・・・・・・・と数え上げたらきりがありませんが、殆どのドメーヌが
《フランソワ・フレール社》と、もう3社か4社の組み合わせで揃えている印象です。
《ドメーヌ デュ クロ・デ・ランブレイ》は全てが《フランソワ・フレール》製だったように思います。
ティエリー・ブルーアン氏と・・・
特に 新樽率の高いドメーヌならば、新品のオーク樽が訪問者を圧倒するはずです。
《ドメーヌ アンヌ・グロ》
このカーヴは モダンな内装、間接照明の効果と相まってさながら美術館。
このフロアは見える限りに於て全て《フランソワ・フレール》製の新樽でした。
《フランソワ・フレール社》はDRC社が使用している事でも有名ですね。
《ドメーヌ ジャン・グリヴォ》も《フランソワ・フレール社》の樽を使用していて、昨年訪問した時に使用している他の樽、
《キャヴァン》
《ベルトミュー》のお話もたっぷり伺えました。
”R”はリシュブールの意。
《ドメーヌ ジャック・プリウール》
このドメーヌのセラーも
《フランソワ・フレール製》を含む数種類の樽で埋め尽くされていました。
「フランソワ・フレールは、細かなオーダーに対応してくれるので使っています」と
醸造責任者の〈ナディーヌ・ギュブランさん〉が仰ってました。
そして、やはり綺麗です。
樽の一部にそのドメーヌの樽内部のトースト加減等情報が 焼き印、若しくは彫ってあり
《フランソワ・フレール社》の正確な仕事へのこだわりが垣間見えました。
造り手の拘り、我儘を訊いてくれる数少ない業者の1つが
《フランソワ・フレール社》の
〈ジャン・フランソワ氏〉のようで、ブルゴーニュでは絶大な信頼を得ています。
樽内の焼き加減を
ハイ・トースト、ミィディアム・トースト、ミディアム・プラス等、呼び方は色々とあるようですが、
〈ティボー・リジェ・ベレール氏〉がオーダーしているのは他の誰も発注していないオリジナルの焼き加減、
クリュ(生)だそうです。
(この場合のCruは形容詞のクリュ〔生の~〕で、ワイン産地を表す男性名詞のクリュとは違います)
殆ど焼きを入れないと仰ってました。
ヴィンテージ・キャラクターに見合う樽メーカー、焼き加減を選んでいるそうですので、こんな所からも、生産者は個性を表現しようとしているのですね。
ブルゴーニュのドメーヌを10数件訪問させて頂いていますが、一流所で《フランソワ・フレール社》の樽が無かった所は一軒もありませんでした。
また、好みの問題ですが、新樽率が高ければ良いということでは無く、今 ブルゴーニュの一流ドメーヌのトップキュヴェなどは、樽香が強くならない様に敢えて新樽率30%位に抑えて、葡萄のフレッシュさを残す方向に持っていっている所も多いです。
ボトルに詰めてから 樽メーカーの異差を感じる事は難しいと思いますが、以前 ブルゴーニュのとあるドメーヌにお邪魔したときに トースト加減の異なる同じキュヴェのワインを試飲させて頂き、その違いに驚きましたので、こちらの方は瓶詰め後も大いなる違いを保っているに違いありません。
「オークの樽と焼き加減」
自分好みのワイン(ドメーヌ)を見つける為の1つの方法論としては、
いささかマニアック過ぎるでしょうか・・・
ともあれ
《フランソワ・フレール社》
知っておくべき名前の1つです。