ドメーヌ アンリ・ジャイエ・・・


故〈アンリ・ジャイエ氏〉は ピノ・ノワールの色に拘った方でした。

拘ったというより 色もワインの楽しみの1つであると・・・

でもそれは、正しく造られたワインが自然に醸し出す色でなければならなくて、色を出す為の醸造であっては本末転倒だということです。

そういった意味で、先日お会いした〈フィリィップ・パカレ氏〉も

私の
「ワインにとって色は重要ですか?」
の質問に

「(色は味や香りほど) 重要ではない」
と仰ったのだと思います。

正しく醸造されたワインなら、自然と色は美しさを備える・・・という事でしょう。

色に関しては、
ニュイ・サン・ジョルシュ村に住んでいたレバノン人の醸造技師で
〈アンリ・ジャイエ氏〉と同じ時期に活躍していた〈ギィ・アッカ氏〉の失敗で、
「何でもやりすぎは良くない」と証明されました。

彼は、〈アンリ・ジャイエ氏〉の醸造方法が素晴らしい技法、だということをいち早く見抜き、更に極端な方法で ボルドーワイン並みに色を濃くしようと試み、結果 全く熟成のしない、およそブルゴーニュワインとは思えない様なワインをコンサルタント先で造っていたのです。

(瓶詰め後直ぐは、目新しく斬新なそのワインも歓迎されていましたが、時間経過と共に色々と不具合が見られる様になり、今ではブルゴーニュでその名を聞くことはありません)

ちなみに、一度行方不明になったあと今現在もブルゴーニュワインに何らかの形で関係はしているそうですが・・・

Guy Accad

(フランス語読みですと ギィ・アッカですが、固有名詞なのでレバノン読みか、英語読みでギィ・アッカドと読むかも知れません。日本では両方の訳が通ってますが、レバノンは1943年に独立するまでフランス領でしたから、フランス語読みで良いのかも・・・

いやいや
《ドメーヌ ジャン・グリヴォ》の
〈エチエンヌ・グリヴォ氏〉はアッカドと言っていたような・・・)

《ドメーヌ ジャン・グリヴォ》は、
〈ギィ・アッカ氏〉に1987年から1992までコンサルティングを依頼していました。
(〈エチエンヌ・グリヴォ氏〉がブルゴーニュでの〈ギィ・アッカ氏〉最後の顧客です)

その頃のワインを今飲むとどうか・・・悪くないです・・・悪くない。

でもそれを云うなら
1984年の 〈ギィ・アッカ氏〉と知り合う前の
《ドメーヌ ジャン・グリヴォ》
〈リシュブール グラン・クリュ 1984年〉はとても綺麗な熟成で美味しかったです。o0405072012512286673さて〈アンリ・ジャイエ氏〉。
葡萄の育て方、ワインの醸造に関しては皆様良くご存知の通り拘りを持っていらっしゃったわけですが、
エルヴァージュの為の 樽への拘りも尋常ではありませんでした。

世界で一番「年輪の目」が詰まっているといわれる中央フランスにあるトロンセの森のオーク材を自分立ち会いのもと選び、2年間自然乾燥させ、しかも一本の同じ木から取れた板材だけで228リットルのピエス(ブルゴーニュの樽の呼び方)を造らせる。

この拘りを理解してくれて、尚且つ協力してくれる業者はなかなか居なかったそうです。
(森まで同行させてくれる業者すら居なかったそうですから・・・)

請け負ったのはサン・ロマン村の老舗樽製作会社、
《フランソワ・フレール社》

選び抜かれた材により出来た
アンリ・ジャイエ氏の為のピエスは、
正に芸術品。
DRC社並みに拘ってます。

今はどのドメーヌも数社の樽を目的に合わせて使い分けるのが主流ですが、当時〈アンリ・ジャイエ氏〉は《フランソワ・フレール社》の樽だけを使用していた様です。

《フランソワ・フレール社》を訪れた顧客がショールーム代わりに見学をしに訪れたのが〈アンリ・ジャイエ氏〉のドメーヌだったそうで、中にはドメーヌのワインを試飲させてもらった幸運な方もいたはずです。o0405072012512338207余談ですが、当時でピエス1つの値段は日本円にして60000円位。
今で80000円から特注品で100000円以上はするそうです。

先日お会いした
《ドメーヌ ティボー・リジェ・ベレール》の
〈ティボー・リジェ・ベレール氏〉も同じように樽に拘っていて、「3社ある樽業者のうち一社とは、やはり森まで同行させて貰っていて、木から選んでいる」と仰ってました。

いい樽が手に入ったら、あとは造り手が新樽の香りに負けない力強い葡萄を育てるだけです。

樽自体の香りは3年もすれば無くなるので、まず新樽(最初広域に使い、後にトップキュヴェに使用のドメーヌも多いです)を上級キュヴェに使用し、2回目以降は、広域ワインに使ったりして、最後は、廉価でブランデー業者等が買い取っていたりします。

有名ドメーヌの使用済みピエスは、それこそ引く手あまたで、大手ネゴシアンが買っていったり、ドメーヌを興したばかりの友人に譲ったりしている様です。

《ドメーヌ エマニュエル・ルジェ》
〈エシェゾー〉のピエスが
《ルー・デューモン》の仲田さんのところに行っているのは有名な話ですね。

こんな事を知らなくてもワインは美味しく飲めますが、知っていて損は無いですし、全てはドメーヌを訪問する幸運に恵まれた時、造り手の仰っている事が少しでも理解出来るようにとの予備知識です。

《ドメーヌ アンリ・ジャイエ》

ブルゴーニュでワイン造りに携わっている人なら少なからず 何らかの影響を受けていであろうその人物に直接会ってお話を伺う事は もう物理的に不可能ですが、
お造りになったワインなら まだ少し・・・ほんの少しだけ市場に残っている様です。o0192014412512540433心配は要りません、あの味覚体験を獲られる事を考えたら、それほど高価な買い物では無いですから・・・